ISO9001とは?
ISO9001は、品質管理を目的としたマネジメントシステムのことです。ISO9001で言われる品質管理とは、「寸法や規格などの製品品質を管理すること」ではなく「定められた要求事項について管理すること」を指しています。その目的は、継続的改善の仕組みを通じ、顧客満足の向上に努めることです。
「定められた要求事項」とはどのようなものでしょうか、具体的にはISO9001規格が定める詳細管理項目がそれにあたります。これらの要求事項を満たしてゆくと、自然とP(Plan)D(Do)C(Check)A(Action)サイクルが確立し、規格が求める継続的改善の仕組みが出来上がります。
ISO9001の骨格については、次の通りです。以前はマネジメント規格ごとに章構造・テキスト・用語が異なっていましたが、2012年に「ISO/IEC専門業務用指針」が改定され、すべてのマネジメント規格において共通のものがつかわれるようになりました。このことにより、複数のマネジメントシステムを持つ組織では、マニュアル等の統合・共通化が可能となりました。これをハイレベルストラクチャー(HLS)と呼びますが、ISO9001も2015版以降この形式に則って作られています。
また、ISO9001規格は7つの原則をもとに、126の要求事項が定められています。
0.1 | 一般 | 7 | 支援 |
0.2 | 品質マネジメントの原則 | 7.1 | 資源 |
0.3 | プロセスアプローチ | 7.2 | 力量 |
0.4 | 他のマネジメントシステム規格との関係 | 7.3 | 認識 |
1 | 適用範囲 | 7.4 | コミュニケーション |
2 | 引用規格 | 7.5 | 文書化した情報 |
3 | 用語及び定義 | 8 | 運用 |
4 | 組織の状況 | 8.1 | 運用の計画及び管理 |
4.1 | 組織及びその状況の理解 | 8.2 | 製品及びサービスに関する要求事項 |
4.2 | 利害関係者のニーズ及び期待の理解 | 8.3 | 製品及びサービスの設計・開発 |
4.3 | 品質マネジメントシステムの適用範囲の決定 | 8.4 | 外部から提供されるプロセス,製品及びサービスの管理 |
4.4 | 品質マネジメントシステム及びそのプロセス | 8.5 | 製造及びサービス提供 |
5 | リーダーシップ | 8.6 | 製品及びサービスのリリース |
5.1 | リーダーシップ及びコミットメント | 8.7 | 不適合なアウトプットの管理 |
5.2 | 方針 | 9 | パフォーマンス評価 |
5.3 | 組織の役割,責任及び権限 | 9.1 | 監視,測定,分析及び評価 |
6 | 計画 | 9.2 | 内部監査 |
6.1 | リスク及び機会への取組み | 9.3 | マネジメントレビュー |
6.2 | 品質目標及びそれを達成するための計画策定 | 10 | 改善 |
6.3 | 変更の計画 | 10.1 | 一般 |
10.2 | 不適合及び是正処置 | ||
10.3 | 継続的改善 |
7原則とはどのようなものでしょうか?
1 顧客重視
2 リーダーシップ
3 人々の積極的参加
4 プロセスアプローチ
5 改善
6 客観的事実に基づく意思決定
7 関係性管理
これら7原則は、要求事項の中に組み込まれているため、対応策を講じる中で自然と取り込まれてゆくことになります。
要求事項についてはどのようなものがあるでしょう ?
7.2 力量
組織は,次の事項を行わなければならない。
a) 品質マネジメントシステムのパフォーマンス及び有効性に影響を与える業務をその管理下で行う人(又は人々)に必要な力量を明確にする。
b) 適切な教育,訓練又は経験に基づいて,それらの人々が力量を備えていることを確実にする。
c) 該当する場合には,必ず,必要な力量を身に付けるための処置をとり,とった処置の有効性を評価する。
d) 力量の証拠として,適切な文書化した情報を保持する。
注記 適用される処置には,例えば,現在雇用している人々に対する,教育訓練の提供,指導の実施,配置転換の実施などがあり,また,力量を備えた人々の雇用,そうした人々との契約締結などもあり得る。
これは、組織に属する人間の業務遂行上の力量についての項目ですが、具体的な手段・手法については書かれていません。
ISO9001規格では「何々を行え」とは言っていますが、「どのように」「どの程度」とは言っていません。
つまり、100メートルを走りなさいとは言っているが、10秒で走れとも、前を向いて走れとも言っていないのです。目的を実現するための手段や程度については、組織自身が決める事としています。
とはいえ、普通の人が100メートルを10秒で走ることは無理ですし、後ろ向きに走ることは非効率的です。組織にとって、適切な対応策をみつけることが、ISO9001を活用するポイントの一つです。
ISO9001は組織自身にとっての成長ツールであるとともに、取引き先選定ツールでもあります。ISO9001導入企業の多くが、8.4 項(外部から提供されるプロセス,製品及びサービスの管理)の要求事項により、供給先を評価し、合格したところへ発注をするという規定を設けています。そのため、ISO認証企業の多くが取引先としてISO9001認証企業を選んでいます。
ISO9001は組織にどのようなメリットをもたらすのでしょうか?
1 業務の標準化による生産性の改善、向上が期待できる。
2 ミスの低減による組織の業績の向上が期待できる。
3 継続的改善が従業員のモチベーションアップにつながる。
4 企業イメージ・社会的信頼性が向上する。
5 認証組織間でのコミュニュケーションの向上が期待できる。
6 新規市場の開拓につながる。
7 顧客満足の向上につながる。